絵画を長期保存する為に

絵画(油絵)を後世まで残す為に必要な事

正しい知識と方法で絵画を保存する

通常、油絵(油彩画)は、出来上がったら
300年から500年は持つといわれています。

しかし、油絵は麻で出来たキャンパスに描かれています
ので、キャンパスである麻の寿命が終わると、
その上に描かれている油絵の寿命も終わりになります。

では、その終わりを免れ、世界の名画達が現代に残っているのはなぜでしょうか?
それは、「正しい知識」を持った画家と所有者が、「正しい方法」を用いて来たからなのです。
では、正しい知識と方法とは一体どのような事なのでしょうか。

絵画(油絵)を後世に残す為の「正しい知識」

油絵を簡単に層で分けると、
下から「キャンパス」「油絵」「コーティング」に
分ける事が出来ます。

この層それぞれに寿命があり、
■ キャンパスは約100年
■ 油絵は300年〜500年
■ コーティングは約10年

と言われています。

つまり、油絵を長期保存する為には、
それぞれの層の寿命に応じて、
定期的な対策を
施さなければいけません。
まずは、この正しい知識を持つ事が大切になります。

コーティング寿命10年、油絵寿命300〜500年、キャンバス寿命100年

絵画(油絵)を後世に残す為の「正しい方法」

■ 次に正しい方法ですが、これは「洗い」と「修復」に分けられます。

洗い
寿命を迎えた古いコーティングを落とし(ほこりなどの汚れも落とします)、
新たなコーティングを施す作業です。
修復
油絵を、寿命を迎えた古いキャンパスから剥離させ、新しいキャンパスに
載せかえる作業です。
※ひび割れた絵画や、切り裂かれた絵画を元にもどす等、修復には様々な作業も含まれます。

そして、正しい知識で述べたように、コーティングの寿命は約10年、
キャンパスの寿命は約100年ですから、10年に一度の「洗い」と、
100年に一度の「修復」を繰り返す作業が必要
になります。

つまり、絵画(油絵)を後世まで残す為には、以下の作業を行えば良いのです。(10年に1度の「洗い」+100年に一度の「修復」)

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洗いの作業紹介

絵画を保存する上で、洗いという作業は、絵画(油絵)をほこりや汚れ、色あせから
保護してくれる大切な役割を担っています。
ここでは、その「洗い」の作業手順をご紹介致します。

今回は、葛浩さんの絵画に洗いを行いました。

洗い

10年前に施したコーティングがある場合は、
これを落とします。
同時に、表面のほこりや油分などの汚れも落とします。
通常はテレピンというオイルを使用しますが、
落ちない汚れ(水性)は石鹸水で落とします。
油絵を傷つけないように丁寧に洗います。

仮引き用ニスの工程

まずは下地を作る為に、ルツーセ(仮引き用ニス)を塗ります。
これは約30分で乾きますので、乾いたらもう一度ルツーセを
塗ります。2層塗るのは、コーティングを10年持たせる為です。
年数が経てば、絵画が焼けたように見えますが、
これはこのコーティングが焼けている為であり、
言い方を代えれば、絵画を守ってくれていると言う訳です。
ムラの無い様、丁寧に塗ります。

仕上げ用ニスの工程

仮引き用のニスが乾いたら、
今度はタブロー(仕上げ用ニス)を塗ります。
タブローには種類がたくさんあり、ツヤ出し、半ツヤ出し、
ツヤ消しなど、絵画に合わせて様々な表現が可能です。
ツヤ出しのタブローのおかげで美しい光沢です。

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修復の価格

絵画(油絵)の状態や価値によって、洗い・修復の価格は変わってきます。
まずはお見積もりをさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。

※100年を越えるような絵画(油絵)につきましては、直接拝見させて頂いての見積りが
必要になります。

>>お見積もりの流れについては、こちらをご覧ください

TEL 052-733-1590

最後に

以上のように、正しい知識と方法を用いないと、絵画の寿命は尽きてしまいます。
 
ここからは主観が入ってしまいますが、この業務に携わる中で、これらの事を知らない
画家や所有者が多いように感じています。
 
過去の名画が現代に残っているように、現代の絵画達も、これらの方法を用いて
後世に残していかなければいけないのでは無いでしょうか。
 
このような知識、つまり「技法」を人から人へ伝えていかなければ、
過去の名画達もどこかで寿命を終えてしまうかもしれません。
 
このホームページをご覧になって頂く事で、
寿命を終えてしまう絵画が少しでも無くなる事を切に願っております。

お問い合わせ〜完了までの流れ

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